スピリチュアリティを探究した賢者は、自らを錬金術師と呼んでいました。
そもそも錬金術とは「岩石を金に変えたい!」と考えた 中世の化学者たちが研究していた術ですが、石を焼いたり煮たり、粉砕したり、他の岩石と混ぜてみたり…かなり苦心したことでしょう。
一方で、当時の化学者たる彼らは 一流知識人。
田畑を耕す労働もせず、研究に打ち込めるだけでも、高位にあったと理解できます。
そんな彼らのグループは、現代的にいえば友愛組織。
ブラザーフッド(brotherhood)です。
「人間の卑属な性質を金に変える心の作業」=精神的作業も継承していたグループでした。
血統のよい家柄の出身者たる彼らだけがしていた、スピリチュアル道をも 精神の錬金術と表現したわけです。
創世記の記述によれば、アダムとイブが神の怒りに触れたため、人間は生涯、労働することを課されてしまいました。ですから 労働は卑しい作業とされていて、王族や神官、貴族が高位についていた時代です。
それだけ 神に近いという立ち位置なんですね。
もちろん、神の世界に近づこうと、精神も研鑽したのです。
暇と余裕があればこそ勉強もできたわけですが、教育も知識も自由もない庶民とのヒエラルキーが形成されていきました。
現実世界は労働者階級が担当し、精神世界は高位の者という区別ができてしまったんですね。
(日本の天皇も雨乞いや豊穣の祈祷をしていたのですから神官の役割は同じですが、田植えや養蚕などの労働を「儀式」としておこなう点では、西洋とは少し異なります。)
錬金術師と精神化学
ミハエル・マイヤー(Michael Maier / 1569-1622 / 医学・哲学博士)は、高名な錬金術師であり、ルドルフ2世の御殿医でもありました。
また、当時のヨーロッパで名高い秘密結社だったエソテリックな組織とも深い関わりがあり、いろいろな寓話を残しています。
ヒプノセラピーの歴史でお教えしているパラケルスス(🇨🇭医師)、ラボアジェ(🇫🇷化学者)も組織メンバーでしたから、催眠でできること、高い意識世界を体験していたに違いありません。
こんなふうに 現代の、日本特有のスピ系(系:本流でない○○流、傍系の意)とは異なるスピリチュアリズムは知識層が探究する学問でした。
ミヒャエル・マイヤーの時代には、こうした知識階級のグループに入りたいという望みを表明しても、ロッジ(集会所)も詳細も秘密。入会に値する資格がないと判断されれば、組織からは何の応答も得られないことは多くあったようです。
賢人の集まりとして、ある種の憧れと尊崇、謎めいたところに惹かれることは、現代でも同じでしょう。
ある友愛組織(Brotherhood)の中には、そんな組織はほんとうに存在するのかと存在を疑われたものもあり、一体どのような人がメンバーなのかと、秘密ゆえの憧れが高まっていたとしても驚きはしないでしょう。
現代でも、スピリチュアリティへの関心が高くかつ哲学的、知的な人の中に(かつて そうであったように)多くの探究者を見つけることができます。
ビジネスパーソン(経営者)が集うロータリークラブなども、身近な友愛組織の一つです。
タロットの秘密
さて、そんな彼らが引き継いできた秘密の研究は寓意として、タロットカードに描かれた画に組み込まれています。
これが (タロット)占いを好む人々にも 知られていないことは 非常に残念。
遊び気分で触れる占いツールに、思わぬほどの知見が含まれています。
そこで なるほど!という深い気づきが得られるならば、もっと大人の感性に耐えうるスピリチュアリズム、タロットを知るでしょう。
当然、そこには心理学や哲学性、科学も含まれていますよ。
何の分野でも 文化、背景知識があると、作品の味わいは深まります。
むしろ、深まりを感じないものは名作にはなり得ません。
多くの含みがあるか、ないかで、とあるツールや作品は、その存在の価値を高めています。
余談ですが、人間も外見や造られたイメージ、年齢でなく、少し話せば伝わってくるものがあります。
職人や研究者…
一途に学習してきたこと、磨いてきた技術…
そこに時間をかけた熱意や興味というエネルギー、あれこれ試作や思索を重ねる間に考えたこと、迷いながら継続してきたうちに備わる哲学がこもっている分だけ、私たちは「あの人は深みのある人だ」などと言います。
ブラザーフッドと十字軍騎士
そして 質の高いスピリチュアリティが浸透するかどうかは、国の民度の成熟が必要だとも言われています。
要は、その国の意識進化度が測られてしまうということ。
スピン情報としてばら撒かれている ”イルミナティ説”、おとぎ話の ”スピ系”からは卒業しても良い頃だと感じています。
ですから今回は、ちょっと深めのウンチクを披露していきましょう。
「もし、友愛組織のブラザー(兄弟)たちにヨーロッパ圏で出会えないとすれば、それは彼らが東方(オリエント)に移住したからだ」とも言っていた彼ら。
ここ数年、日ユ道祖論として語られている説が、伝統的エソテリックでは、数百年も前に知っていたとしたら、只者ではないことがわかります。
中世にできて解散してきた秘密結社は、大小いろいろあります。
かつての騎士団は、今や各国で勲章名となり、今なお 名を残しています。
レジョン・ド・ヌール勲章、ガーター勲章は それぞれ レジョン・ド・ヌール騎士団🇫🇷、ガーター騎士団🇬🇧に変わりました。
おそらく一度は耳にしたことがありますでしょう。
日本の(奈良)東大寺にも僧兵が配備されていたそうですが、ヨーロッパの彼らも、もとは十字軍、つまり僧兵です。
洋の東西を問わず、形式は同じであることにご注目!
なぜかというと、世界思想の源はもともと一つだけだから。
(右)スコットランドのシッスル騎士団
(左)王室メンバーの騎士団正装(シッスル騎士団紋章と同じ)
The イルミナティ
さて他方には、武力で戦わない賢者の組織がありました。
その源は、古代ギリシャやエジプト文明よりも前の失われた文明の伝承者たち。
古代エジプト文明とバラモン教に起源を持つとされたー現文明の前代にあって すでに消え去ったもう一つの文明ーアトランティス由来です。
前文明の崩壊が起こった時、アトランティスの末裔が生き延びたのは、地理的な条件からヨーロッパ〜北インド辺りと 伝わっています。
ですから、バラモン教とくれば インド・ヨーロッパ辺境が発祥です。
それが インド側では ヴェーダ哲学、サーンキヤ哲学… 断食に禊ぎ(沐浴)へと発展していきます。
すると、それらの哲学は宗教というよりも、超文明・アトランティス人の末裔による高度な教えであることも見えてきますね。
さらに アーリア人=アトランティス末裔とくれば、ナチスドイツの優生学思想へと突き進んでしまった人類の過ちも見過ごせません。
「アーリア人が偉い!」という思想は、超文明人の子孫だからです。
(下の画像)ナチスドイツの象徴図案として広く知られる鉤(カギ)十字
いえいえ!
この図案は 遥かなる歴史を持つ神聖な紋様です。
太陽の光り放射を図案化したもので、古代よりヒンドゥー教や仏教で使われ、同時にキリスト十字の1種でもある幸運のマークでした(です)。
日本でも 家紋や寺の地図記号、青森県弘前市のシンボルマークに「卍」を使用していますね。
卍(左Manji)は「和のもと」、卐(右Manji)は「力のもと」とされています。
(ナチスは パワー=右Manji の 卐 を採用し、弘前市のシンボルは 左Manji = 卍です)
ほら、繋がってきましたか?
古代に潰えた世界から手渡された 人類への遺産。
共通の教え、原始哲学(のちに分化して、いろいろな宗教になった元の礎)、各国で同じ紋様、印…から、壮大な地球史、人類史の「ミッシング・リンク」が見えてきます。
*バラモン教:ブッディズム(仏教)興起の以前からあるヒンズー教の源で、インド・アーリア人社会の原始多神教をさします。聖典はヴェーダ。自然崇拝が特徴で特定の教祖を持ちません。
彼ら、真のイルミナティの教えは、エレシウス*とサモトラケ**(ともに古代ギリシャの地名)の秘義から、やがてペルシアのマギ***、ピタゴラス学派とアラブ文化、広く世界中に一つの原理、宇宙の法則として継承されていきました。
<伝承>の守護者であると主張した彼らの教えの奥深さは、インスタントやファストフード的では得られないかもしれません。
いまだに私も探究者の一人です。
ずっと弟子であり、生徒であり、学習者なのだと思います。
カロリーや量が 勝負の手っ取り早さはないけれど、気が遠くなるような数千年の歳月を経て、吟味・精製されたエッセンス。
(説明されないと理解できない 反語や例え話が多いのね…。)
それが神秘学ー由緒あるエソテリックの味わいでもあり、そして良質な栄養エッセンスの集合体なので、誰しも経験している人生に適用でき、納得してしまうほど益も、効力も感じられるのです。
そして、文言だけを盗んでも理解できないよう、象徴や暗喩に満ちていて、難解に書かれているフシがあります。
数学のように、入門からの積み上げがなければ 理解に及ばないのです。
だからこそ、教えそのものを賢者の石 (哲学者の石=philosophers’ stone)と呼んでいました。
ハリーポッターの小説でもテーマになっていましたね。
フツーの人には石ころでしかないけれど、賢者が持てば金を生み出すと考えられているのが賢者の石。
これでは、盗んだところで 何の価値もありませんから。
豚に真珠、猫に小判…というのと似ていますね!
つまるところ、賢者の石を手に入れることは、宇宙と人生を支配する法則を知ること。
こうした叡智団体の階位の一つを イルミナティと呼ぶのです。
イルミナティとは「光の啓発を受けた者」という意味で、そもそも団体名ではありません。
団体名ではなく一般用語ですから、その名称を自称する団体もあるでしょう。
ここまでで、かなり長い記事になってしまいました!
私の知る イルミナティとホワイトブラザーフッド(大白色同胞団)については次回にしますね。
アウェアネスIns.のレッスンでも、それぞれ由緒、宇宙法則の学習時に 触れていきます。
関心のある方は、どうぞご質問ください。
神秘学派メンバーの絵画
下の絵をご覧ください。
(左)黄金の卓の象徴(Michael Maier / 1617年出版)
(右)参考:ウィトルウィウス的人体図 (Leonardo da Vinci / 1490年頃)
山は何を意味しているでしょう。
なぜ山の上下に壺があるのかしら。そして何の象徴?
バラが何の意味で、なぜ5本なのかな…
そうしたことの寓意が秘密とされていたこと。
今風にいえば 社外秘です。
そして、その一部だけをかじって公開された情報が、The Secret (引き寄せの法則)、願望を叶える方程式でした。
これらは、街角で誰にも彼にも、それを欲していない人も もらえる無料ティッシュのようにはいかない質のもの。
いかがでしたか?
スピリチュアルな思索タイム。
点と点がつながり、深い智慧が引き出されてくれば幸いです。
語句の解説
*エレウシスの秘儀:古代ギリシャのエレシウス(地名)にて、女神デーテーメールとペルセポネー崇拝祭儀。農業崇拝を基盤として、当時の最大の尊崇を集めた。主な祭儀は毎秋に催されたアテナイの祝祭に取り込まれた。
**サモトラケ:ギリシャとトルコの境にあるエーゲ海の島。
***マギ:救世主の誕生を祝すため、幼子イエスに会いにきた遠方から旅してきたとされる(聖書)”東方の三博士” を指す場合が多い。 彼らは占星術師 (当時の天文学者)と考えられる。マギは、人知を超える知恵や力を持つ存在を指し、英語のmagic の語源になっていて、マギが示した奇跡は、現代の手品に相当する不思議さだった事がわかる。
璃子 Riko Claire
アウェアネス・インスティテュート
Awareness Institute
ヒプノとサイキック
レッスン / セッション
米国催眠士協会・米国催眠療法士協会
認定トレーナー