心理療法 には興味がなくても、自分の前世となると別で、ひとは 誰でも自分自身のことを、いつも もっと知りたいと思っているもの。
今回は前世療法のケースから、ヒプノセラピーとは どのような感じで進むのかをご紹介していきます。
しばらくの沈黙を破って、私は訊いてみた。
セラピスト:そこは、どこ?
彼女:…(沈黙)…
彼女は目を瞑ったまま眉をひそめ、まぶたの向こうに何かを見ようとしていた。
彼女:…いちば…街の市場のような…。
セラピスト:(あなたは)そこで何をしているの?
彼女:ただ歩いています。本を持って…歩いています
(ハッと気づいたように) 私は…私は学生です
セラピスト:どこの国? 地域でも。
そう問われて、彼女の潜在意識は、何かを検索にかけているようだった。
彼女:…エ… エジ…プト。
セラピスト:あなたはエジプトに居るんですね? あなたは女性?それとも男性?
彼女:おとこ。
(今度はしっかりと頷くような表情で)
はい、男です。
はじめてのヒプノセラピー・ワーク練習より
催眠を誘導しながら 一番、驚いていたのは…たぶん 私のほう。
今、彼女は 私の目の前に 確かに 居て そして同時に、いつだか知らない時代のエジプトに居る。
うぅん… ここに彼女は もう居ないのかも知れない。
今の彼女は、流れる風の匂いや砂埃を感じているのだから。
沈黙が続く。
うっすらと 涙がにじむ 瞼。
(涙は、埋もれていた感情を解放します。レッスンでは 号泣体験が多く起こります。)
その向こうには別の世界が拡がっているのだった。
これは私が初めておこなったヒプノセラピー(催眠療法)トレーニングの模様です。
「今生のテーマ」に関する幼い頃へと誘導したのですが、彼女の潜在意識はもっと遠い 過去生にいってしまったのでした。
ふたつの意識レベル
私たちの意識は大きく二つの領域があって、それはよく氷山に例えられます。
海上に出ているのが顕在意識。
海中にはその何倍もの質量の氷塊があり、それが潜在意識だというモデルで説明されています。
その割合は1:9 とも 0.5: 9.5 とも。
意識は物質ではなく計れないため 数値はいろいろですが、潜在意識が広大な領域であるというのが 研究者たちの一致した見解です。
セラピーでは、ほんの小さな不自信だったり、理由のない孤独感や不安感などを記憶の底から取りだして、解放していくために幼児期に退行していきます。
そして、胎内にいた頃や、潜在意識にしか記憶がない(と思われる)前世まで辿ることになるのです。
かといってスピリチュアルなイメージで特別に神秘的な体験や自分の意識をまったく失ったように、憑依的なフル・トランス状態を期待すると (あれ?これが催眠状態?)と思うかもしれません。
催眠中は普通に会話もできるし、涙を拭いたり、顕在意識も機能していて (なんで、エジプトなんだろう?)と思考している自分もちゃんといるわけです。
そう、潜在意識と顕在意識がつながっている状態で、例えるなら、電車に乗っていながら昔を想い出している感じ。
今のあなたは、次の駅が どこかもわかっているし、車内アナウンスも聞こえる。
けれど意識の大部分は”今”になく、 心の眼では別の景色を見ていて、香りや周囲の音までも浮かんできている。その時代、場所の風や気温を感じられる。
その時空に集中していながら、一方では(次の駅で降りなくちゃ!)と気付いてもいます。
その感覚が催眠状態。
それならいつも誰もが没入していますよね。
潜在意識は 記憶ストレージ
もう一つ、例を挙げましょう。
映画のワンシーンを観て(ゾゾ~!)と鳥肌が立つ。
(あぶない!)と思った瞬間にドキドキする。
これも、意識がシーンの中に没入し、体験と一体化している証です。
実際のあなたの目の前にあるのは画像を映し出す、ただのスクリーン。
あなたは、そのスクリーンに鳥肌が立ったりドキドキしている。
そこに現実はない。
なのに、あまりに臨場感が高いので、潜在意識はその情報を取り込んで、そしてそのように五感は反応し始めます。
泣いたり、笑ったり、怖くなったり。
何かに深く集中している状態でいるときにも潜在意識の扉は開き、あなたは催眠に入っています。
潜在意識は生まれてから現在に至るまで、すべての出来事を覚えており、全てのシーンを撮影した、いわば記憶のストレージ。
あまりの情報量なので、顕在意識では 保持できず、また必要もないので 多くは潜在意識に 封印しています。
この封印を解くのがヒプノセラピー。
信じなくても、構わない
心理学の見地からいえば、前世はあってもなくても 、信じても信じなくても構わないのです。
ただ、その記憶や感情が表出したのはなぜだろう?
なにか それに反応するものが潜在意識に埋もれていたんですね!
では、それは解除しましょう 。
不要な感情なら 終わらせましょう という見方をするのです。
記憶の確かさを証明するのでなく、感情や記憶がでてきた理由を見ていく作業です。
なかには、どこかの星や別宇宙から来たソウルの意識、過去生は天使だったという記憶や、ヨーロッパの騎士や修道女、アジアの貧しい少女だったりします。
…ですから実際、調べようがありません。
もちろん、心理学では説明のできない不思議も起こっています。
具体的に確認できる史実と合致したため、真実と思えるケースもありますし、また 確認できないからといって事実でないという証明もまた、できないのです。
前世そのものの概念については、反証もできないけれど、確証もないといった具合です。
このように、研究者たちの物議をかもしだしている【前世体験】ですが、それでもなお、この追憶のセラピーが、人々に有益な効果を発揮していることは 事実なのです。
璃子 Riko Claire
アウェアネス・インスティテュート
Awareness Institute
ヒプノとサイキック
レッスン / セッション
米国催眠士協会・米国催眠療法士協会
認定トレーナー